本年度の研究は、東京裁判の国際(刑)法的検討を行うという目的に照らして、まず、国内外における東京裁判の歴史的研究の成果に注目し、第二次世界大戦(アジア、太平洋戦争を含む)中からニュルンベルク裁判および東京裁判にいたる国際状況の展開、とくに戦争犯罪の国際裁判による処罰の企てや計画に関する資料・文献の検索・収集から始めた。そのために、まず国内の図書館・資料館、なかでも関西大学図書館のみならず、東京(国立公文書館など)や広島(原爆平和資料館)などで関連資料の検索・収集を行い、また、国立公文書館における検索および資料整理については研究協力者に依頼した。さらに、東京裁判の歴史研究者や国際政治史関係の研究者と関連資料や歴史研究の進捗状況について意見交換を行った。また、東京裁判の複雑な経緯について、国際(刑)法の観点から研究を進めるために、東京裁判シンポジウム(オーストラリア:メルボルン)において行った報告に基づく原稿(英文)を書き、それが本年出版される書物(英文)の1章となる予定である。さらに、欧米における東京裁判のはじめての本格的研究書であるポイスター/クライアー著『東京国際軍事裁判所その再評価』(オックスフォード大学出版社)の翻訳に関係し、そして、国際法の観点から解説文を書いた。このような研究は、東京裁判を国際法の観点から概観するもので、個々の法的論点について詳細に分析するための前提として、不可欠のかつ重要なものである。
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