研究課題/領域番号 |
22530055
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
沢田 克己 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40187290)
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キーワード | 排出量取引 / 温室効果ガス / 排出量取引指令 / EU ETS / NAP / 欧州連合 / 欧州委員会 / 許容量単位 |
研究概要 |
平成23年度においては、その前年度に研究をおこなった京都議定書上の義務の遂行として欧州連合が実施した立法である排出量取引指令によって設立された「共同体温室効果ガス排出枠取引制度」(以下、「EU ETS」という。)の制度的な枠組みおよび内容を明らかにした。その概要は、次の通りである。 排出量取引義務が生ずる活動は、排出量取引指令附属書Iに列記されている(全て、二酸化炭素排出を伴う活動)。附属書IIは、対象となるガスとして京都議定書附属書Aが掲げると同じ6種の温室効果ガスを挙げる。附属書IIIは、構成国が国内割当計画(以下、「NAP」という。)を立てる際に遵守すべき(一部は「遵守しなければならない」)判断基準を立てる。附属書IVは、附属書Iに挙げられている活動からの温室効果ガス排出についてのモニタリングと報告書提出に関する原則を定める。附属書Vは、排出量取引義務のある施設が毎年提出しなければならない温室効果ガス排出報告書の検証(Verlification ; Prufung)の基準を定める。 NAPは2012年に終了する第2フェーズまでは各構成国が立案し、欧州委員会の承認を得ることとされていた。しかし、2013年に始まる第3フェーズについては、欧州委員会が欧州全体のキャップを設け、全構成国について単一のルールに基づいて排出枠の割当を行う。欧州委員会の規則によって、これを実行することとされている。EU ETSにおいては、各構成国にはそれぞれ国内の発電施設と産業施設から排出される二酸化炭素総排出枠上限であるNAPを立てる義務がある。各構成国は、二酸化炭素排出枠を国内の個別施設に配分する(その総量は、NAPの量と同じである)。1許容量単位は、二酸化炭素1トンの排出量をカバーする。各NAPは、各フェーズの期間毎に立てられる。事業者間の排出枠の売買は、炭素価格を生じさせる(二酸化炭素1トン当たりの価格となる)。各施設への排出枠の数は排出量取引指令によって直接に決定されるのではなく、2段階の手続を通じて各構成国によって決定される。NAPの策定と、1フェーズごとの排出枠の総数および施設の操業者への排出枠の割当である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
欧州連合の排出量取引制度を設立する排出量取引指令の全般について、その制度的枠組みと内容を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
欧州連合の排出量取引指令に従って整備された欧州連合加盟国の国内法の研究を平成24年度および平成25年度において行う。平成24年度には連合王国(イギリス)、平成25年度にはドイツ連邦共和国の国内法を対象に研究を行う。平成26年度には、排出量の自由な国際取引に対してWTO加盟国政府が何らかの制約を課す場合のWTO諸協定の適用のあり方について研究を行う。
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