研究最終年度にあたる本年度は、これまでの検討作業を踏まえ、医療提供体制の整備における医療計画の役割について次のような理論的検討を行った。 第1に、医療提供体制において、医療機関の機能分野と連携に基づく医療提供が標準的な医療提供の方法として位置づけられたことにより、疾病、事業ごとの医療体制を定めた医療計画の重要性が高まった。第5次医療法改正に基づく変化を中心に、この点についての理論的検討を行い、研究成果の一部を公表した(「医療提供体制」日本社会保障法学会編『新講座社会保障法1これからの医療と年金』法律文化社、2012年)。 第2に、医療計画をはじめとした医療関連計画における計画間調整の問題である。行政計画を用いた医療施策が増大したことにより、計画相互の関係、調整方法が課題となることを明らかにした。計画の策定手続、調整対象、策定時期の調整などの観点から医療分野における計画間調整のあり方を検討し、研究成果の一部を公表した(「医療関連計画における計画間調整」週刊社会保障2694号) 第3に、医療計画が定める各種施策の実現手法の検討を進めた。医療計画の実現にあたっては、規制、補助金、診療報酬による誘導、特定の医療機関の認定などの手段がとられている。本研究では、各種施策を通じて確保、推進される法的利益に着目することにより、多様な施策の相互関係と法的統制のあり方を検討する視点を提示した。検討すべき課題が数多く残されているが、研究成果の一部について論文を執筆し、公表する予定である(「『医療を受ける者の利益』の多段階的実現」矢嶋里絵ほか編『人権としての社会保障』2013年6月刊行予定)。
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