本年度は、労働契約法施行後の状況について、非正規雇用の広がりと集団的紛争の発生(広州ホンダや中国東方航空のストライキ)を取り上げて、研究を行った。また、工会(労働組合)と並んで、企業内の労働者の集団的組織である従業員代表大会制度について、その法律上の地位・機能・実態について研究を行った。これらの研究で明らかになったことは、中国では、法律上、労働者に様々な権利が付与されるようになってきており、従業員代表大会や工会(労働組合)には、法律上、かなり強い権限が付与されている。しかしながら、その権利の実効性を高めるためのサポート体制が不十分であり、特に、工会(労働組合)などの組織が、労働者の権利や利益の保護に必ずしも積極的ではなく、組合活動を行った組合幹部の地位を保障するためのシステムがないことから、工会(労働組合)に頼らず、自主的な集団的活動を超すようになってきている(非正規労働者や若年労働者による非公式なストライキなど)。上記の研究では、今後、中国において、工会(労働組合)をどのように位置づけ、実際に、労働者代表として積極的に活動することが重要であることを指摘した。特に、非正規労働者や若年労働者の利益にも十分配慮した活動が、工会(労働組合)にも求められよう(そうしなければ、社会の不安定要因ともなりかねないことも留意が必要である)。こうした傾向は、東アジアの諸地域に共通の状況でもある。また、台湾において、労働組合の活動を保護する不当労働行為制度が2011年5月1日よりスタートする(法整備は既に実施され、施行を待つ状態)。こうした台湾での取り組みは、大陸中国においても参考になるものである。
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