この年度には、労働組合、フランチャイズ関連企業、学識経験者などにヒヤリング調査を行い、(1)請負、業務委託契約下で自分で業務に従事する就業者の労働組合法上の労働者性および(2)契約労働者の契約関係を研究した。 上記(l)の研究成果としては、労働組合法上の労働者の概念および判断基準を明らかにしたことがあげられる。すなわち、労組法上の労働者とは、労基法上の労働者と区別された概念であり、(1)労働契約の一方当事者、または(2)請負、委託などの労働契約以外の契約に基づき(a)自分で役務を提供しこれに対して報酬を受け取り生活すること、かつ、(b)使用者の事業組織に組み入れられて、(c)契約締結時および契約締結後において契約内容の一・方的決定・変更を実質的に受け入れざるを得ない地位にある者をいうべきである(北海道労働判例研究会報告)。 上記(2)の研究成果としては、民法上の典型契約である雇用と労働契約の違いを明らかにし、さらに、現在検討されている債権法改正に対して提案を行ったことがあげられる。すなわち、雇用と労働契約の違いとしては、(1)契約自由原則の下にある雇用に対して、判例法理として労働契約が労働者保護の観点から法形式強制のもとにおかれていること、(2)雇用とは自分で労務に従事していることを要件としているのに対して、労働契約は、使用者が労働力の利用につき指揮命令の権能を有する契約をいうと解する。そのうえで、現在法制審議会(債権関係)で検討している債権法改正審議について、雇用と労働契約を一体化する提案がなされているが、法律時報誌において、これに反対する旨を述べた(下記、法律時報1027号掲載)。
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