契約労働者を、①伝統的な労働者、諸外国における第三のカテゴリ(たとえば、ドイツの「労働者類似の者」)、さらには自営業者と対比させて定義し、②その保護の必要性を諸外国の法制度と比較しながら日本の実態をふまえて探り、③契約労働者に対して労働法上いかなる保護(労働条件)を付与すべきか、社会保障法上いかなる制度を構築すべきか、④個人役務提供者の契約関係をどのように法的に構成するかを検討する。その際、労働法にとどまらず、民法(債権法)、社会保障法(雇用保険制度、労災保険制度など)にも目配りしながら研究する。 今年度は、委託型就業者、契約労働者に関するこれまでの国内調査、海外調査の結果をとりまとめ、この分野の研究者と宿泊合宿を行い、成果のとりまとめを行った。その内容は以下の通りである。 委託企業により業務を受託して、個人で役務を提供する個人役務提供者のうち、「特定の企業(委託者)から業務を受託して、個人で役務を提供し、これに対する報酬によって生活する者」を「契約労働者」と定義する。 本研究は、憲法25条の生存権、27条1項の労働権に基づき、契約労働者を業務災害から補償するため、委託者の無過失責任に基礎とした、委託者の強制加入による災害補償保険制度の創設を提言する。委託型就業者がその法的地位を事前に確認できるようにするために、国は、関係者の申請に基づいて、その法的地位を確認する照会手続を創設すべきである。 また、委託型就業者の契約について、その法的性質を基本的に民法上の「雇用」と捉え、民法の雇用規定に、契約内容の特定および変更に関するルール、報酬債権の発生と消滅に関するルール(とくに、不就業における報酬債権の存続)、解約規制ルールなどを設けることを提言する。
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