研究課題/領域番号 |
22530064
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
城下 裕二 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90226332)
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研究分担者 |
山本 輝之 明治学院大学, 法学部, 教授 (00182634)
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キーワード | 臓器移植 / 生体移植 / 臓器移植法 / 治療行為 / 自己決定権 / インフォームド・コンセント / 臓器売買 / 人体利用 |
研究概要 |
平成22年度は、生体移植に関する内外の文献を調査・分析し、刑事法的問題点の総合的な抽出を試みた。また、研究代表者および分担者の各所属大学において、全5回の研究会を開催し、生体移植の刑事規制に関する現代的諸問題を検討した。さらに、平成23年2月には、厚生労働省の臓器移植対策室において、室長をはじめとする関係者に詳細なインタビューを実施した。これらのことから、(1)一般的には「死体」からの移植に限定したものと理解されているわが国の臓器移植法について、立法の過程においては一部に生体移植をも意識した規定が設けられたこと、(2)立法当局としては、法律とガイドラインの二本立てという形式をさしあたりは維持しようとしており、「刑事規制」という面においては、(臓器売買を別にすれば)基本的には刑法上の傷害罪の適用で足りると解していること、(3)他方で諸外国の立法には、死体と生体を含む広義の「移植法」を当初から標榜するものもあり、また、当該法律独自の刑事規制(処罰規定の創設)を行うものもあること、(4)これまで(脳)死体からの移植が中心であるとされてきた諸外国においても、アメリカ合衆国のように、近年急速に生体移植の件数が増加している例もあり、国際的な規制のあり方にも新たな動きが予想されること、が明らかになった。こうした知見は、従来理解されてきたわが国の「移植立法」の背景事情に新たな角度からの検討の可能性を生じさせるだけでなく、今後、本研究で作成を予定している「生体移植に関する(刑事)法的規制モデル」の内容・形式の両面にわたって多くの示唆を与えるものと思われる。
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