平成24年度の研究では,これまでの研究成果に加え,各種学会・研究会等への参加や日独の関連文献の検討を通して,第1に,人権制約の最小限性が,日本国憲法や子どもの権利条約により求められることから,少年法上の処分が持つべき再非行防止効果が,あらゆる再非行ないし再犯を防止する効果と解されてはならず,当該非行と同種の非行を繰り返すことを防止する効果と解されるべきことが確認された。この趣旨を活用した,家裁調査官による社会調査のあり方については,日本犯罪社会学会第39回大会における報告として結実した。 第2に,同種再非行がなかった期間については,ドイツや他国における実証研究に基づけば,少年である間の効果が問われるべきで,かつ,長期間の再非行予防効果の検証は,大掛かりなものにならざるをえず,検証が極めて困難なことから,これを5年を超える長期と解することは妥当ではないことも確認された。 第3に,少年法上の各処分に再非行防止効果があると言えるかの基準については,憲法や子どもの権利条約によれば,それは,各処分が持つ,人権制約性の度合いによって定められねばならないことも確認された。この成果の一部は,単著論文「刑事・少年司法におけるEBP」(『刑事法理論の探求と発見』所収)において公表した。 第4に,精確度の高いケース研究によって,一定期間,少年がその処分等を受ける前提となった非行と同種の再非行を行わなかったことが確認されたのであれば,憲法や子どもの権利条約によれば,それは,当該処分や制度を,より重大な非行に走った少年に対しても適用する根拠としての価値が認められるべきであり,他方,同様のケース研究によって,人権制約性の度合いの大きな処分を受けたことが同種再非行に至った要因であることが確認されたのであれば,それは,当該処分の運用や,処分そのものを見直す根拠としての価値が認められるべきことも確認された。
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