今年度は、研究課題である「未成年者の精神疾患治療における、患者への情報の開示および説明と患者の承諾」の問題に関して、今後わが国においてどのようなことが検討されるべきかを論じるにあたり、とりわけドイツとの比較においてこれを考察していくべく、まず、基本的な文献を収集し、これを分類し整理するという基礎的な作業をおこなった。また、これと並行して、ドイツにおける関係研究者への研究協力を依頼し、各種調査活動を行った。 具体的には、まず、昨年5月、チューリヒ大学のターク教授の招きを得て参加した同大学医事法大会では、ヨーロッパ各国の研究者との意見交換を通して当該研究テーマに付随する有意義な示唆を得ることができた。夏には、ゲッティンゲン大学に現地でアルツハイマー患者や承諾能力のない子どもへの医的侵襲の問題に関する委員会のメンバーを務めるドゥットゥゲ教授をたずねて、同教授より当該問題についての見解を聞き、続いて、ドイツにおける生命倫理と法の問題に詳しいギーセン大学のヴォルフスラスト教授、アウグスブルク大学のロゼナウ教授に文献検索等で力を借りた。一方、遡る6月には、韓国・仁川大学の柳仁模教授を日本に招き、生命倫理に関する共同研究を行った。また、11月には、中央大学創立125周年記念行事の一環である日本比較法研究所主催のシンポジウムの講演者にターク教授を迎え、生命倫理に関する問題につき共に検討を加えた。なお、日本の生命倫理の研究者にターク教授、ドゥットゥゲ教授を加えての生命倫理と法に関するシンポジウムを遠からず開催する予定である(本シンポジウムは、本年4月に開催の予定であったが、3月に起きた東日本の震災の影響のため延期となった)。文献としては、一昨年4月にギーセン大学のグロップ教授、ロゼナウ教授を迎えて中央大学にて開催されたシンポジウムの報告をまとめたものを公表する予定である。 以上を基礎的な資料として、精査・検討作業に入り、今後は、研究の方向付けを明確にしていきたいと考えている。
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