本研究の目的は、消費者のための市場秩序を法政策学的観点から形成するための理論モデルを構築し、それを立法的提言にまで結びつけることにある。そして、研究初年度である本年度は、基礎的研究を行うとともに、社会実践に面でも一定の貢献を行った。 まず行政的手法のあり方を総合的に把握するため、本研究プロジェクト申請後、池田清治『消費者庁および消費者委員会の設置の意義と経緯』現代消費者法5号4-12頁(2009年)を執筆していたが、これに基づき、池田清治『不当勧誘と不退去・困惑させる行為』(後掲)において、行政的手法と司法的手法の相違について検討することができた。 次に消費者行政の実践面では、引き続き北海道消費生活審議会会長を務め、『北海道消費生活基本計画』の策定に当たった。これは国の消費基本計画に対応するもので、今回、北海道ではじめて立案されたが、数値目標をも取り込んだ充実した内容となった。 最後に消費者の集団的救済制度についても、引き続き基礎的研究を行った(池田清治『消費者団体の団体訴権』(後掲))。 そのほか、消費者契約法に関わる判例評釈を、本研究の成果として公表するとともに(後掲)、司法研修所の民事裁判教官を対象として、消費者問題とも重要な関わりを持つ「契約締結上の過失」法理についてセミナーを行った(後掲)。さらに生活者の保護という観点では、消費者問題とも近接した領域を取り扱う北海道本人加確認情報保護審議会においても、今年度から会長を務め、社会実践との関わりを深めた。
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