研究課題/領域番号 |
22530074
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
河崎 祐子 東北大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (80328989)
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キーワード | 倒産裁判所 / 裁量権 |
研究概要 |
平成23年度には、当初の予定通り、昨年度得られた知見との比較検討の素材となる新たな比較法研究や隣接社会科学領域での現代的議論を中心に、資料や情報を収集・検討し、考察を進めた。具体的には、まず大陸法系の倒産法制との比較法研究のためにドイツ倒産法について、複数の教科書や注釈書を入手し精査することにより研究課題にかかる基本的・一般的な知見を深めるとともに、最新の学術論文や学術書を調査した。次に、政治・経済・思想の領域では、倒産の背景原理たる現代資本主義や近代国家と市場との関わりについて、テッサ・モーリス・鈴木『自由を耐え忍ぶ』を最初の出発点に、最新の情報や議論状況を調査し、得られた情報を整理し、分析した。また、隣接法律分野である労働法についても、次年度の調査・研究の基盤となる基本資料の収集・調査を進めた。 以上の研究成果については、東日本大震災による交通機関や所属研究機関の機能不全が一定期間続いたため、論文の執筆・公表という形をとることは困難であった。また、所属研究機関の紀要「法学」は、投稿希望者が殺到していることが判明したため、最善の対応策として2年先の投稿機会を確保するのが精いっぱいであった。とはいえ、今年度得られた知見は、仙台地方裁判所の主催する管財人等協議会において、実験的私見を交えた研究報告にまとめ、公表した。この報告内容は、昨年度公表した学術論文に対する恩師らからのコメントに示唆を受けて、破産手続における破産裁判所の協働作業パートナーたる破産管財人の側面から(いわば裏面から)倒産裁判所のあり方を検討したものである。このほか、今年度公表した判例評釈は、今年度までに得られた知見を反映させる形で、初版の内容を大幅に修正したものであり、同様に今年度に実施した研究の成果ということができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたとおり、新たな比較法研究の対象としてのドイツ法について、また、政治・経済・現代思想分野での関連する情報として特に現代の資本主義をめぐる最近の議論について、順調に情報を収集し、精査を進めている。また、今年度の研究成果をもとにして、今年度にも仙台地方裁判所主催の管財人等協議会において実験的仮説を公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、今年度も平成23年度と同じく、ドイツ法の比較法的研究、隣接社会科学分野の最近の議論状況および労働法分野との連関に比重をおいて、情報の収集・精査と考察を進める。 なお、可能であれば実施したいと考えていたアメリカでの聞き取り調査についてな、現時点でより研究効率がよく、重要性も高いと考えられる国内実務に関する調査に置き換えるべきであるとの結論に達した。というのも、現在、制定10年を経た民事再生法について平成23年度終盤頃より再改正の気運が盛り上がってきたため、外国よりも国内の議論に注目することが時宜を得て重要と考えられるからである。具体的には、大阪の中堅弁護士が中心となり、研究者を交えて構成されている倒産法改正に係る研究会に参加することが決定している。同研究会への出席や研究報告のために国内出張旅費等を支出していきたい。
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