研究課題/領域番号 |
22530074
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
河崎 祐子 信州大学, 法曹法務研究科, 准教授 (80328989)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 倒産裁判所 / 裁量権 |
研究概要 |
本研究課題は、現代の倒産処理において益々重要性を増しつつある倒産裁判官の裁量権についての考察を目的とするものであり、さらに過去二年度の考察を通して、倒産処理において裁判官と密接な協働関係にある破産管財人等の手続機関に照射することを通しても、倒産裁判官の意義や役割が有意義に浮き彫りになることが明らかとなった。そこで平成24年度には、より意識的にこの両面からのアプローチを採用しつつ、当初の計画通り、比較法研究、歴史研究を継続的に推進するとともに、隣接社会科学領域での関連する議論を参照し、資料・情報を収集・検討し、考察を進めた。 具体的には、まず比較法研究では、昨年度に引き続いてドイツ倒産法に重点を置き、多数の注釈書や解説書、紹介論文を入手して精査する一方で、その改正前旧法であるドイツ破産法についても改めて情報収集に努め、研究課題にかかる基本的・一般的な知見を深めた。さらに、従前の考察に基づいて新たに「支払不能」概念の考察に研究上の新たな可能性が見出されたことから、同概念について日本法及びドイツ法上の学説・判例をたどる作業に着手し、目下鋭意継続中である。次に隣接領域では、「支払不能」概念の考察に伴って企業会計分野における議論との比較に資する基本資料・学術論文の収集・調査を進めた。そして、過去二年度にわたり取り組んできた我が国倒産法の歴史的考察もさらに押し進めており、重要な古書の購入や国会図書館蔵書の閲覧等を通して精力的に資料収集を行った。 以上の研究成果については、平成25年度中に2つ以上の学術論文にまとめる予定であり、平成24年度にはそのための構想を練りつつ、その都度必要資料を取り揃えた。また、これまでに得られた知見に基づいて、複数の判例評釈を公表した。このほか現時点でなお未刊行な学術論文、判例紹介も複数あり、そのいずれにも本研究成果は十分反映されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重点的な比較法研究の対象であるドイツ倒産法、隣接する社会科学領域での知見(特に現代の資本主義及び会社のガバナンスに係る最近の議論について)、そして歴史研究の対象である日本の1890年及び1922年の破産法について、当初の計画通りに順調に情報を収集し、精査を進めつつ、過去二年度の研究成果である裁判官の倒産手続上の機関との協働という観点からの考察に加え、新たに「支払不能」概念の変遷に研究上の可能性を見出すなど、考察の方法及び内容がより多様化、深化した。これら成果を学術論文にまとめるための準備、構想も順調に進んでおり、その一端は平成24年度に執筆した判例評釈等にもよく反映された。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は本研究課題の最終年度であり、4年度にわたる考察の成果を現時点での研究上の到達点として、2つ以上の学術論文にまとめる。それゆえ、倒産法以外の学問分野に目を向けたさらなる知見の拡大よりも、従前の研究を収束・深化させる方向に軸足をおいて研究を進める。すなわち、ドイツ法を中心とした比較法研究、日本の倒産法についての歴史研究の進展に比重を集め、その考察において隣接領域から従前得てきた知見等を活かす。また、論文執筆の過程で積極的に研究報告の機会を求め、考察内容の多面化、客観化を図る。
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