研究課題/領域番号 |
22530077
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
金岡 京子 東京海洋大学, 海洋工学部, 教授 (70377076)
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キーワード | 民事法学 / 保険法学 / 解約返戻金 / 保険料積立金 / 疾病保険 / ドイツ保険契約法 |
研究概要 |
平成23年度は、低・無解約返戻金の合意を基礎とする傷害疾病定額保険契約を長期間継続した後に、比較的高齢になったときに解約した場合の経済的リスクを考慮した解約返戻金の規制に関する研究を行った。本研究では特に、ドイツにおいて2009年1月1日から施行された保険契約法204条1項において、解約後、法定疾病保険を代替する基本タリフを契約した場合には、旧契約の老齢化引当金から、基本タリフの老齢化引当金に対応する部分を新契約に移行できるという規定が定められたことに着目し、日本の保険法92条の保険料積立金に関する規定とドイツ法の老齢化引当金計算に関する規定との比較検討を行い、無解約返戻金を前提とする疾病定額保険においても、一定の条件の下で保険料積立金を新しい契約に移行させることにより、保険契約者の経済的リスクを軽減する規整が可能であることを探求した。 また本研究では、疾病保険の分野では、医学の進歩、疾病状況の変化、公的健康保険制度の改革、保険契約者の保障ニーズの変化、わかりやすくて必要な保障の提供という観点から、伝統的な生命保険の分野に比べ、時代の進展とともに、顧客ニーズにより近い保険が新たに提供され続ける傾向にあること、および資産形成機能も併せ持つ保険とは異なり、比較的負担の少ない保険料で長期間継続することに対する指向性が高い保険であることから、日本においても、ドイツの保険契約法204条1項のように、同一の保険会社内で保障の本質は変わらないが、よりニーズに適した疾病保険契約に変更することを希望する保険契約者に対し、変更前の契約において積み立てられた保険料積立金をできる限り新契約に移行させることにより、加齢とともに上昇する保険料の高額化を回避するための保護規制が必要であることを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツ法との比較検討において、疾病保険の保障内容の相違、保険料積立金計算の相違、無解約返戻金合意の考え方に関する相違等を文献に基づき、一つ一つ検証しながら研究を進めており、その検証作業に時間を要しているものの、現段階ではその成果に基づき、本研究が目的とする解約返戻金規整の現代化において重要な意義をもつ無解約返戻金規整に関する方向性を論文で公表する段階にまで達することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果に関し、保険法の専門雑誌に論文として公表するための執筆にとりかかっている。これまでの研究成果を踏まえ、解約返戻金の計算規整およびその計算に関する情報開示規制に関する研究へと進展させるために、引き続き、ドイツの保険法研究者、憲法研究者、約款規制法研究者との研究討論および共同研究をすすめる。
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