本研究では、わが国の金融法制度が堅実にかつ持続的に発展するための担保理論を再構築するために、将来債権譲渡に関する法制度・裁判例、賃料への物上代位等の抵当権権制度の研究を行う。 その初年度である平成22年度は、内外の文献や資料を収集すると同時に、東京・大阪での調査研究、ドイツ法・フランス法・中国法などの実態調査・文献収集を実施した。具体的には、内外の文献・裁判例を整理分析したうえで、担保法制研究会(平成22年7月10日早稲田大学法学部)及び現代担保法研究会(平成22年9月18日淀屋橋合同弁護士法人)などにおいて、「将来債権の譲渡・担保の対抗力」に関する報告を行い、参加者から有益な示唆を得た。 また、平成23年3月1日~6日中国・上海社会科学院において「将来債権の譲渡・担保と抵当権の再構築」に関する報告を行い、中国における金融経済の持続的発展との関係について意見交換を行った。さらに、平成23年3月14日~21日ドイツ・ハイデルベルク大学において、同大法学部のパイファー教授とドイツ抵当法、将来債権の譲渡、ドイツ民法改正等に関する意見交換を行い、上記テーマに関する資料収集を行った。あわせて、フランス法に関する文献収集も行った。 以上の研究・意見交換・文献は、本テーマに関するわが国の研究を再構築するための有益な論拠となるものである。これらの研究成果は、中間報告として、「債権譲渡担保論の批判的検討」を、広島大学法学部の研究紀要である広島法学に、また、「債権譲渡制度と抵当権制度の再構築」を、出版予定の論文集『金融担保の法理』の総括として、公表する予定である。
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