研究課題/領域番号 |
22530082
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鳥谷部 茂 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (20155609)
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キーワード | 資金調達方法 / 将来債権の譲渡担保 / 賃料への物上代位 / 動産・債権譲渡特例法 / 根担保の効力 / 債権譲渡の制度設計 / 抵当権の制度設計 / 堅実な担保制度の再構築 |
研究概要 |
最近の資金調達方法として、1999年以降、将来債権の譲渡性が、診療報酬債権の譲渡を契機として、国税債権に対する対抗問題を契機として、又は債権譲渡特例法との関係で、大幅に拡張されてきた。他方、バブル経済期の過剰貸付債権を回収するために抵当権に基づく物上代位が肯定され、さらにバブル経済崩壊後の不良債権を最優先課題とする政府の方針の下で抵当権登記時基準説を採用し、賃料への物上代位が債権譲渡(差押え等)に対する関係で優先することとなった(最判平成10・1・30民集52巻1号1頁)。 将来債権は労働または行為の対価であり、果実である。これが、遠い将来まで非占有担保権者に先取りされることは、不公平であるばかりではなく法の信頼を損なう。他の一般の担保方法との関係においても、動産債権譲渡特例法の対抗要件付与は、わが国の債権譲渡や抵当権の制度設計を破壊するものであり、米国のサブプライムローンやリーマンショックと同じ問題を引き起こす恐れがある。 何よりも堅実な担保制度(資金調達方法)である民法上の先取特権、留置権、質権設定、債権譲渡、相殺、物上代位、破産開始決定、債権の差押えなどが、劣後化、後退化、不安定化することは望ましくない。資金調達方法の多様化は必要であるとしても、その実体に相応しい効力が付与されるべきである。現代の金融担保において重要な機能を果たす債権譲渡担保及び抵当権について、担保の効力、目的債権の当事者が交替した場合の対抗力などを中心に、民法の制度設計を明確にすることにより、堅実な担保制度を再構築すべきであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、新たな資金調達方法の基礎となっている将来債権譲渡と抵当権について、裁判例を中心に整理・分析した。その結果、当事者間の効力、第三債務者及び第三者に対する対抗関係について、民法の制度設計を再確認し、動産・債権譲渡特例法などの新たな資金調達方法との関係を再構築することが必要であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
これまで2年間行った研究である、わが国の現状、諸外国の動向、裁判例の整理検討を踏まえて、最終年度は、各制度をいかに再構築すべきかを検討する。各制度の再構築は、公平で持続的に発展する堅実な担保制度という観点から実施する。 これまでの研究により、比較法や判例法の整理分析から、現在の立法や解釈のどこに問題があるかが明らかとなった。最終年度は、それらの問題について、堅実な実体を有する民法の制度設計を優先し、判例法や特別法の対症療法的な対応措置を見直し、両者が体系的に整合性を有する堅実で、かつ、柔軟な担保理論を構築する。
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