将来債権は労働または行為の対価であり、果実である。これが、遠い将来まで非占有担保権者に先取りされることは、不公平であるばかりではなく法の信頼を損なう。 他の一般の担保方法との関係においても、動産債権譲渡特例法の対抗要件付与は、わが国の債権譲渡や抵当権の制度設計を破壊するものであり、米国のサブプライムローンやリーマンショックと同じ問題を引き起こす恐れがある。 何よりも堅実な担保制度(資金調達方法)である先取特権、留置権、質権設定、債権譲渡、相殺、物上代位、破産開始決定、債権の差押えなどが、劣後化、後退化、不安定化することは望ましくない。資金調達方法の多様化は必要であるとしても、譲渡当事者だけではなく、それと対等な第三債務者保護規定を設けた上で、その担保実体に相応しい効力が付与されるべきである。 個別担保権が包括根担保権より優先するのが望ましい。わが民事法上の制度としては、根抵当権に関する民法398条の2、根保証に関する民法465条の2第2項、仮登記担保契約法14条、企業担保法6条、7条などのように、包括根担保の効力は劣後化されるか又は制限されている。私見は、堅実かつ公平で持続的発展という視点から、担保の効力の基準を各担保方法の担保構造(担保の合意、目的物の特定、被担保債権の特定、支配根拠)から導くという視角を提唱してきた。 その基準は、さらに次のような場面や要素を考慮することによって再構築されなければならないであろう。①法定担保か約定担保か、②対抗要件が公示された担保方法か対抗要件の規定がないか又は公示されない担保方法か、③不動産本体に対する対抗要件か不動産の収益に関する対抗要件か、④対抗要件具備の順か担保構造の効力の順か、⑤裁判手続外での効力か裁判手続上での効力か、などである。
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