研究概要 |
本研究『スコットランド民事責任法研究-民法改正と比較法』は、世界的な民法改正・再編纂の動向を踏まえ、かつ、<日本民法典の改正>に向けた具体的な立案・検討作業に接続し、従来わが国では殆ど先行研究のないスコットランド民事責任法に焦点を定めて、わが国の民法改正論議への新たな視座を獲得することを目的として計画された。 本年度は初年度として、まず、スコットランド民事法全体にかかる基礎研究から手掛けられた。広く、スコットランド法全般に関する文献研究の傍ら、民事法の領域に即しても、ことに、17世紀以来のInstitutional writers (Stair, Ekskine, Bankton等)の著作等の法制史的文献のほか、スコットランド民事判例法、スコットランド独自のLaw Commission Papers、さらには、スコットランド民法典(the Scottish Civil Code)制定の是非を巡る活発な論説の展開状況等につき、一定の基本的認識を獲得することができた。これらのスコットランド民事法に関する基礎資料等は、わが国の民法学界等にあっては殆ど未見の法文献であり、その入手方をさらに推進する必要が自覚された。 年度を通した各論的な研究領域としては、不法行為(delict)を割り当て、スコットランド不法行為法の基礎研究を推進した。具体的には、Edinburgh大学における現地調査も含め、古典的・代表的文献、さらには各種の最新論攷をも探査し、スコットランド不法行為法の全体にわたる数多くの論点等につき、その歴史的形成から今日の法状況に至るまで、判例法・制定法・学説の展開過程を詳細に跡付ける作業が着手された。その作業は次年度以降も継続されるが、個別の論点に関する比較法学的考察にあっては、イングランド法さらには大陸法等のほか、終始、日本法との対照を自覚的に推進しており、その比較法学的分析枠組みの開発についても一定の成果をあげることができた。
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