22年度の研究実績は、本研究目的である(1)制限能力者の財産管理における法的課題を実証的に分析、(2)地域金融機関と地域サービス機関との独創的な連携モデルの構築、(3)法学・看護学・福祉学の隣接領域の結集による新たな福祉契約モデルの創造の3つのテーマにつき、基礎資料の収集と制度調査を行った。具体的には、 (1)高齢者財産管理の実態把握 ・山梨県立大学にける国際政策学部・看護学部・福祉学部の連携研究者との情報交換。 ・山梨県内における地域金融機関実務担当者や弁護士・司法書士等への聞き取り調査の実施。 (2)財産管理契約に関する判例調査 ・成年後見制度や意思能力に関する判例データの収集・分析を行い、高齢者財産管理に必要な法的措置、任意後見契約などの契約スキームの問題点と財産管理形態モデル案を検討した。 (3)制度調査 ・イギリスにおける「公的後見人(パブリックガーディアン)」制度の調査とアイルランドの同様の制度比較を行った。関連する香港、韓国、台湾、中国の信託についても調査を行った。 ・連携研究者との研究体制として、新井誠教授と地域における成年後見制度の普及・啓蒙のためのシンポジウムを実施した。また、ドイツにおける「世話人」制度の調査をドイツミュンヘンのマックス・プランク外国社会法・国際社会法研究所(Max-Planck-Institut fur auslandisches und internationales Sozialrecht)において共同で行った。 ・横浜において「成年後見法世界会議」の開催運営・参加、各国研究者と情報交換した。 上記の研究実績は当初策定した22年度研究実施計画の項目を概ね網羅するものであり、進捗率も予定通りのものとなり、次年度への研究計画の基礎固めと示唆を得ることができた。
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