平成22年8月にインドネシアのジャカルタ市とメダン市に出張し、最高裁判所、司法研修所、高等裁判所、地方裁判所、宗教裁判所、行政裁判所を訪問し、裁判官と意見交換をした。大学は、アトマジャヤ大学、ジャヤバヤ大学、北スマトラ大学を訪問し、研究者と意見交換をした。同年12月に日本に研修に来たインドネシアの最高裁判所の裁判官に当職の法科大学院での授業(民事訴訟法演習)に参加してもらい、その後、学生、教員と法曹養成制度について意見交換した。 平成22年7月には韓国釜山で、大学、裁判所関係者と日本、韓国、中国、台湾の民事調停制度について比較シンポジウム、10月には中国上海交通大学で研究会に参加したが、その際、日本の民事調停の実情を紹介するとともに、インドネシアに対する法整備支援について報告した。 平成23年2月には台湾台北市に出張し、裁判所の民事調停の実情を見学し、裁判官との意見交換、台湾大学で研究者との意見交換を実施した。 以上の研究のうちインドネシアへの出張は、直接、インドネシアの紛争処理の実情を調査して、現状を把握するとともに課題を確認するのに必要不可欠のものであるが、裁判所と大学の関係者と意見交換できたことは大変有益だった。その他のものは、直接にはインドネシアの紛争処理の実情とは関連しないが、日本からインドネシアへ法整備支援をするにあたり、日本だけではなく、韓国、中国、台湾などが取り組んでいる紛争解決の改革の現場を見聞することは、日本の状況、インドネシアの状況と問題点を把握するのに大変有益だった。各国とも意欲的に新しい取り組みをしており、本で読んだ知識では時代の進展の速い現代では取り残されるということをつくづく実感したものである。インドネシアに対する関心から始まった本研究であるが、他国の状況を知れば知るほど関心が拡がって来ている。次年度はマレーシアやシンガポールにも視野を拡げようと考えている。
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