今年度の研究は、高齢者の住宅資産活用に関して重要な役割を果たすであろうと考えられるリバースモーゲージと同様の制度を、法制度化(抵当権付終身貸付)したフランスでインタビュー調査を実施するための準備作業について主に行った。その準備調査として、日本の高齢者が住宅資産活用のための契約であるリバースモーゲージや不動産ビアジェに関してどのような意識をもっているのかについてインターネットによるアンケート調査(60歳以上の男女520名、持ち家所有者、25項目)を実施した。アンケートから明らかとなったのは、日本の高齢者は、子どもに依存することなく高齢者のみで生活を維持しようとする傾向が強く、居住形態に関しては、できるだけ現在の住宅に住み続けたいと答えた高齢者が全体の約8割であった。また、財産については、子どもたちに残すよりも、自分たちで使い切るという意識が極めて強い実態が明らかになった。リバースモーゲージ契約に関しては、特に貸付であることから生じるデメリットに対する警戒が強いことが確認でき、不動産ビアジェ契約に関しては、売却として不動産の所有権を失ってしまうなど、やはりそのデメリットについての不安が強い一方で、終身にわたり給付が受けられるというビアジェ特有のメリットについても若干ながらも評価されていることが分かった。 そして、このアンケート調査結果をもとに、日本の状況とフランスの状況とで比較検討できるためのインタビュー内容を作成し、さらにフランスでより具体的な情報交換するために、日本でのアンケート調査をフランス語に翻訳した。さらに2008年にフランス経済社会評議会から発表された「les viagers immobiliers en Frace」に関する意見書且つ報告書の内容、また2010年にフランスで年金改革法案が可決されたこと等も参考として、実際に、フランスのCredit foncier de France社およびLegasse Viager社に対しインタビュー調査を実施した(具体的なインタビュー調査内容については次年度を参照)。
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