研究課題/領域番号 |
22530088
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
太矢 一彦 東洋大学, 法学部, 准教授 (90368431)
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キーワード | 高齢者 / リバースモーゲージ / ビアジェ / 居住資産 / 抵当権付終身貸付 |
研究概要 |
フランスで唯一抵当権付終身貸付を行うCe6dit foncier de France社およびパリで古くからビアジェを専門に扱う不動産会社LegasseViager社において実施したインタビュー内容の検討を行った。 インタビューから明らかとなったのは、まず抵当権的終身貸付には保険的な要素もあることから仕組みが複雑であり、また取り扱う金融機関にとってはメリットが少なく、その一方で不動産を抱え込むなどのリスクが大きいということである。そのことから、資産価値に対する貸付割合が低くなり、高い金利が設定されることとなり、結果として、抵当権付終身貸付の普及の妨げとなっている。また不動産ビアジェに関しては、不動産価格が上昇基調にある場合についてのみ成立する投資を目的とした取引である性質が強いといえる。現在の日本では、不動産価格の急激な上昇は考えられず、そのことからすれば、ビアジェのような契約形態が利用される可能性はフランスと比べても極めて低いといえる。しかしその一方で、近時は子供のいない世帯も増えており、さらにインタビューで指摘されたように、担保付貸付である抵当権付終身貸付よりも、売却である不動産ビアジェの方が、高齢者自身が受け取る金額が大きくなること等を考えれば、場合によってはビアジェが活用される場面もあり得る。このようなことからも、様々な条件、要素が考えられることから、高齢者の老後資金を捻出するための選択肢を増やしておくことは望ましいといえ、今後は抵当権付終身貸付とともにビアジェについても検討していく必要があると考えられる。 また抵当権付終身貸付、ビアジェに共通して、高齢者の契約であるという観点から、契約当事者の他に第三者が契約締結時に介在し、高齢者が適切な契約を締結することができるようなチェック体制をとることは重要である。フランスではその役割を公証人が果たしており、わが国においてもその役割を果たすものについて検討することが必要と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2010年にフランスで年金改革が行われたことから、その影響でフランスへ調査のため渡航するのが遅れ、フランスでのインタビュー、フランスで入手した資料の分析・検討が若干遅れている。しかし、その反面、フランスでのインタビューの準備作業としてアンケート調査を実施することができ、その結果が、フランスでのインタビュー調査に寄与した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、フランスでのインタビュー調査のまとめおよび収集した資料等の分析を行っているところである。今後は、フランス以外の国の制度も含め、高齢者の住宅資産活用の法制度のあり方についての考察を深めるつもりである。
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