本研究内容であるフランス不動産銀行及びビアジェを専門に扱う不動産介入会社等においておこなったインタビュー調査をフランスで収集した文献等を参考としながら纏め、雑誌にて発表した(「フランスにおける抵当権付終身貸付及び不動産ビアジェの現状」土地総合研究20巻3号)。本調査研究において、フランスでの抵当権付終身貸付(リバースモーゲージ類似の制度)の導入過程とそこでの問題点を明確にすることができたと思われる。本研究は、現在進行中の民法(債権法)改正の委員会(法制審議会)において、山野目幹事による意見書のなかで紹介され、また今後、わが国で高齢者の資産活用に関してリバースモーゲージなどを検討する際に参考になるものと思われる。 さらに、フランスのビアジェに関する研究を基礎とし、わが国における有料老人ホームの入居一時金の法的性質について考察した論稿を発表した(「入居一時金の法的性質ー利用権方式の有料老人ホームを中心として」『財産法の新動向』)。現在、有料人ホームの入居一時金に関しては社会的関心が高まっており、対価性の観点より入居一時金の授受を否定する見解が強く主張されているが、その一方で入居一時金は、入居者の終身の居住を保証するものであり、入居者自身からも支持されている場合も多い。このようなことから、入居一時金を、終身にわたる有料老人ホームの入居費用の一部前払金と解し、そのことをビアジェ(終身定期金)により論拠づけることができるのではないかということを提案したのが先の論文である。今後、さらなる高齢化が進行するわが国においては、高齢者が終身安心して生活の出来るための環境整備が重要であり、本研究は、それを模索するフランス法上の法制度を研究し、実際の運用にまで踏み込みながら、わが国における法律構成を考察した点において意義を有するものと考える。
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