本研究は、瑕疵担保責任の本質を危険負担の法理に基礎づける。この結論は、フランス法の沿革に合致し、かつ、グローバルスタンダードであるウィーン売買条約の規律とも合致する。すなわち、ウィーン売買条約は、物品の適合性の判断の基準時を、危険が買主に移転した時である(36条1項)とし、その危険の移転時期については、原則として、物の支配の移転に従う(69条)。もっとも、瑕疵担保責任は、危険負担と異なり、不適合が隠れていることに特色がある。それゆえ、不適合が隠れているか否かによる区別をしないウィーン売買条約では、瑕疵担保責任は、その独自性を失い、危険負担と債務不履行の制度に一元化されることとなる。
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