研究課題/領域番号 |
22530093
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
渡邉 泰彦 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (80330752)
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キーワード | 法学 / 民法 / 憲法 / 家族法 / 婚姻 / 同性婚 / 性同一性障害 / ドイツ:オーストリア |
研究概要 |
最高裁判例では非嫡出子の相続分を嫡出子の1/2とする理由に婚姻制度の保護を挙げていることから、「非嫡出子の相続分をめぐる判例の推移」では、判例の推移を検討し、日本法における婚姻概念の一端を明らかにした。性同一性障害による性別変更が特例法より認められる場合には、変更後の性別において婚姻することができるため、どのような場合に性別変更が認められるかは、婚姻の当事者の範囲にも影響を及ぼす。その面から、「性別変更の要件の見直し-性別適合手術と生殖能力について」において、戸籍上の性別変更の要件(特例法3条1項)がもはや必要なく、性別適合手術の有無、生殖能力の有無にかかわらず、性同一性障害であれば性別の変更を認め、戸籍上の性別から見て異性と婚姻することができることを明らかにし、婚姻当事者の範囲について考察した。同性パートナーシップと婚姻との対比は、「同性パートナーシップの法的課題と立法モデル」で、昨年の学会報告と同様に、・ヨーロッパ各国の立法状況、同性婚の導入状況を概観し、「同性パートナーシップ法(Ver. 2)」ではその登録状況を統計を用いて、婚姻が同性カップルにも認められた場合、あるいは登録パートナーシップが認められた場合にどれだけの当事者が利用するのかを実証的に明らかにした。ドイツにおける登録生活パートナーシップ法の現状として「ドイツ同性登録パートナーシップをめぐる裁判例-退職年金と相続税について-」では、連邦憲法裁判所の判例が、登録生活パートナーシップと婚姻との関係を以前と異なる文脈でとらえ、両者が比較可能な関係にあることを紹介するとともに、相続税法の家族原理ですら、現在においては検討の対象となり、もはや婚姻だけではなく、同性パートナーシップでも検討されるべきことを紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GID学会における報告など性同一性障害の観点から婚姻概念を考察する研究に携わっていたこと、平成24年度比較法学会での同性婚に関するシンポジウム報告でドイツ法を担当することから、婚姻概念にかかわる民法と憲法の比較にまで至らなかったため、スイス、オーストリアの状況の研究に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
比較法学会ミニシンポジウム「同性婚」での報告をとおした研究とともに、ドイツおいて登録生活パートナーシップ法が導入された際に婚姻概念について議論された内容を検討する。さらに、近年とりわけドイツにおいて問題となり、スイスにおいても議論が始まっている、共同縁組を夫婦に限らず同性カップルにも認めることができるのかという議論をとおして、親子関係との関わりで婚姻の意義を検討する。
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