1 比較法学会ミニシンポジウム「同性婚」において、ドイツにおける同性登録パートナーシップの状況を概観し、これまで行ってきた研究のうち、ドイツに関する現時点での概括をした。ドイツでは、生活パートナーシップ法施行からも同性カップルの法的保護に関して連邦憲法裁判所の判例は推移を続けている。一方において、連邦憲法裁判所2009年7月7日決定は、同性カップル・生活パートナーシップと婚姻との関係において、基本法6条1項の婚姻の保護から、基本法3条1項の平等原則に論点を転換し、より積極的な保護に踏み出した点で特筆される。他方において、同性カップルの法的問題は、親子関係とりわけ縁組の可否も中心となっている。 2 日本においては、婚姻と親子関係をめぐり、FtMGIDを夫とする夫婦において妻が非配偶者間人工生殖によって子を懐胎した場合に、この子を嫡出子とする出生届が受理されるかが問題となった東京家審平成24年10月31日を判例評釈で検討した。当事者が性同一性障害者である場合に、父子関係の推定においても婚姻の効果において違いがなく、二種類の婚姻があるのではない。 3 オーストリアの登録パートナーシップ法をめぐる状況について、ヨーロッパ人権裁判所シャルクとコプフ対オーストリア事件とその後のオーストリア憲法裁判所の判例を検討し、同性婚の可否、同性カップルの法的保護について、同性婚を含むという婚姻概念の拡大よりも、同性カップルと異性カップルの間の差異が差別に当たるかについて平等原則による検討することがより効果的に用いられている。 4 スイスで資料の収集・調査を行い、婚姻と家族について、ヨーロッパ人権条約の解釈が憲法の解釈に大きな影響を及ぼしていることを確認した。それにより、上記ヨーロッパ人権裁判所判決がスイスにおける婚姻の位置づけでも重要となる。
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