アメリカでは、離婚後の子の監護権・養育費の決定は全て裁判事項であるため、離婚後の監護権形態は裁判所により命令されなければならない。1970年代後半より各州で共同監護(joint custody)が立法化され、裁判所で監護権の所在について争われてきたが、今日では各州とも、法的監護・養育、身上監護・養育及び面会交流を含め、離婚後の生活として総合的に「養育計画(parenting plan)」を取り決め、裁判所がそれを承認するという傾向になってきている。父母は、子の教育や宗教指導、医療の合意等子に重要な決定権限を父母双方が持つか否か、子の日常の主たる養育は誰が行うか、休日や休暇はどちらの家を訪れるか、将来の紛争にどう対処するか等という養育計画を、予め用意されている書式に記入して作成しなければならない。各州には離婚する父母に教育を提供しており、必要があればカウンセリングやメディエーションを利用することになる。養育費は父母の合意に拘わらず課せられる義務であり、これについては裁判所はもとより養育費強制執行事務所が情報を提供し、さらにはウェブ上で計算できるなど取決め強化に努めている。しかしその履行は、監護権形態や面会交流の頻度に影響を受けやすい。そこで連邦は「子との交流促進のための交付金」として毎年1000万ドルを、各州が計画する非監護親の教育やメディエーション、面会監視支援に充てるとしており、その資金が民間団体で活用されている。アメリカはこのように、子に対する権利・義務と実際生じる問題を総合的にとらえ、その執行のための援助に人と金を使っていることが分かる。しかもそれは裁判所だけが対処するのではなく、養育費であれば行政事務所、養育計画作成であれば専門家、執行支援であれば民間の専門機関が対処するなど資源を充実させている。これも、家族の問題を国家の問題として捉えることで成し得ることである。
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