研究課題/領域番号 |
22530097
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小山 泰史 立命館大学, 法学部, 教授 (00278756)
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キーワード | ABL / 事業再生 / 流動動産譲渡担保 / 流動債権譲渡担保 / 固定化 / 物上代位 |
研究概要 |
流動動産譲渡担保に基づき設定者の取得する損害保険金請求権に対して物上代位を認めた最高裁決定(最1小決平成22年12月2日金判1356号10頁)が出現した。この最高裁決定について、本年度中に2本の原稿を執筆・公表した。まず、NBLに公表した原稿では、同最高裁決定を契機として、流動動産譲渡担保全般における議論がどのように影響を受けるかについて、包括的に検討した。ただ、本来は判例評釈としての執筆であり、最高裁決定の事案に即した検討に限定すべきところ、ややその域を超えて議論を展開しようとしたところに限界があった。 その後、判例時報社より、同決定について判例評論上での原稿執筆の機会を頂いた。そこで、今度は、純粋に判例の射程に限定した検討を行った。流動動産譲渡担保そのものの問題としてではなく、非典型担保に物上代位が認められることの意義、そして、物上代位の目的債権としての損害保険金請求権に対して物上代位が認められることの可否を、民法304条の代位目的債権(「売却、賃貸、滅失又は損傷」)の種別に照らして検討すべきであるとの視点から分析を試みた。すなわち、抵当権の代位目的債権においては、売却代金債権に対しては物上代位を否定すべきとの主張が有力であるが、譲渡担保においてこれを肯定した今回の最高裁決定が、抵当権を含めた物上代位の議論全体において、どのような意義をもつかを、中心に据えて、検討を行ったわけである。 結果として、以上の2つの論稿によって、最決平成22年12月2日につき、(1)流動動産譲渡担保の議論における意義、(2)抵当権等の担保権との関係において、物上代位一般の議論との関係、の2点について十分に検討を加えることができたと言えるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書の研究計画に挙げた「カナダのBankruptcy and Insolvency Act(連邦倒産法)§81.1および§81.2の規定する「売主の取戻請求権」を十分に展開できなかった点。
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今後の研究の推進方策 |
2012年2月18日から3月4日にかけて、カナダ・トロントに出張し、交付申請書に挙げたカナダ倒産法に関する資料収集と、企業倒産を専門とする弁護士や大学教員に対するインタビュー調査を行った。結果として、国内では入手の困難な論文等のコピーを得ることができ、また、インタビューにより、カナダの倒産実務についての知見を得ることができた。調査の結果得られた資料等を加えて、2012年度は、カナダ倒産法における上記「11.」の課題を含めた検討を本格的に展開することとしたい。
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