本年度は、研究最終年度であることをふまえ、研究成果発表の準備とともに、研究過程で現れた新規問題について検討を行った。まず、研究成果の総論の一部として著書「アメリカ民事法入門」を発表した。本書の中で、大規模不法行為と証券詐欺事案を紹介するとともに、これらがアメリカ民事法において緊急の検討課題になっていることを示し、本研究課題の重要性と可及的速やかに解決されるべきことが認識されていることを指摘した。 さらに、各論として本研究の第1の課題である大規模不法行為損害賠償については、まず「アメリカにおける大規模不法行為人身損害の賠償」において、アメリカ不法行為損害賠償を構成する填補賠償と懲罰的賠償を検討した成果を公表した。大規模不法行為損害賠償の訴訟形式であるクラス・アクションについては、以下の検討を行った。まずクラス・アクションを提起する当事者数とその訴えの正当性について、これを判断した事件の判例研究を行い、「クラス・アクションの要件(Duke v. Wal-Mart)」を公表した。また、クラス・アクションと適正手続を論じた著書を検討して、その書評を「クラス・アクションは憲法違反か?」で公表した。 本研究の第2の課題である証券取引については、「米国連邦証券詐欺規制の新展開」において、証券詐欺禁止の中心的規定である1934年連邦証券取引所法10条(b)項・SEC規則10b-5に基づく黙示の私的訴権に関する問題点を検討した。また、本稿で扱った連邦証券詐欺規制に関する最近の合衆国最高裁判所の判例を、「出訴期限と2010 年Merck & Co.事件合衆国最高裁判決」、「米国連邦証券詐欺クラス・アクション」、「2012 年Simmonds 事件合衆国最高裁判決の検討」、および「米国連邦証券詐欺に関する最近の合衆国最高裁判決」で紹介した。
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