本稿においては、平成17年商法改正で創設された会社法及びそれに関連する省令と、平成18(2006)年12月13日東京証券取引所が上場企業に向けた「合併等の組織再編、公開買付け、MBO等に関する適時開示」の充実化要請について検証することを目的としている。本来会社法あるいは省令が利害関係人に向けた開示制度の構築および充実の役目を果すべきことなのであろうが、東京証券取引所の適時開示の充実要請により、企業への影響を検証する必要がある。そこため、本稿では、(1)会社法および省令による要請と(2)東証の適時開示の充実要請について、市場でどのような影響が現れているかを検証した。会社法では、会社の組織再編について、事業の再構築の必要性が高まり等の近時の情勢を背景とし、会社経営の機動性・柔軟性を図るために、合併等の組織再編について、(1)合併等の対価の柔軟化、(2)簡易組織再編行為の要件の緩和、(3)略式組織再編行為の創設などのような制度設計がなされることで、消滅会社の株主などに大きな影響を与える可能性がある。他方で、東京証券取引所の適時開示の充実要請、さらに施行が一年延期されていた合併等対価の柔軟化に関する規定の施行(省令の施行も含む)により、被合併会社の株主にとっては有利な、逆に合併会社にとっては慎重な行動が要求されるという傾向がみられた。また、公表日から合併が行われるまでの期間についても短縮されている点であるが、これは、組織再編行為に係る契約で定めた日において、当該組織再編行為の効力を生ずるとしたことで、会社法がねらいとした合併等の手続きの混乱を回避するという点が解消されたようにみられた。
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