特許権の第一次的権利範囲確定方法であるクレーム解釈と、第二次的権利範囲確定方法である均等論の法的性質を各国の法制度、法実務を比較することにより導き出すのが本研究の目的である。このために、英国特許法から発展したクレームの発展史を探求すると同時に、近時産業発展が目覚ましい中国におけるクレーム作成・解釈実務に関しても調査の対象とした。 本年度は、前年度に行った中国の実務を対象とした調査を継続した。特許事務所を対象とする調査に加え、上海を中心に現地経営コンサルタントに対して、中国における日系中小企業の特許技術問題に対する意識や同様に中国現地企業の意識を調査した。 現地大企業は、北京を中心として特許技術に関心が高いものの、特許技術は本社に任せており、地方支社は地方の法律事務所との関係でも、特許に関する問題はほとんど扱っていないことが判明した。 このため、特許クレーム解釈や均等論適用の実務は北京を中心とする大都市の実務及び学説の影響を踏まえ発展する可能性があると考えられることがわかった。クレーム解釈及び均等論に関しては、現状では、最高裁判例以前の基準に類似した基準が適用されており、産業の発達に合わせて変化が生じるかを注視する必要がある。 中国における実務状況は、地域によって大きくことなり、また、判例が必ずしもすべて公開されているわけではないため、引き続き現地実務家・研究者との連絡を維持して研究する必要がある。
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