プロ・スポーツというあまり法的次元でとらえられていない文化事象を、法的なレベルでとらえ直し、その規律のあり方を明らかにしようとする第一段階として、EUとなる前から存在していたヨーロッパ・レベルでのスポーツ組織が、どのような法的基盤に基づいて設立されたのか、国境を越えた組織設置の根拠となる法はいかなるものかを検討するために、研究代表者・井上は、日本との比較におけるプロ・スポーツ組織の競争的あるいは競争制限的な仕組み、さらにそのマネジメントの下にあるプロ選手の法的地位に関する考察についての論文を比較法的な観点からの文献を掲載するフランス・ボルドー大学の比較法雑誌に公表した。また、研究分担者・志谷は、ヨーロッパのプロサッカーのビッグ・クラブも例外ではないデリバティブ取引での巨額の被害を被った事例を検討するための比較法的な観点での法的評価をまとめた論文を公表した。 なお、研究代表者・井上は、連携研究者・春名の市民社会における個人の位置づけに関する研究も参照しながら、スポーツという文化事象に対する財政的援助の仕組みであるスポーツクジに対する国家独占の問題性についての欧州司法裁判所の判例を素材に、プロ・スポーツクラブのガバナンスのあり方を検討する報告も行うと共に、来年度に向けて、研究分担者・志谷と共に、文化的公共財としてのスポーツの法的問題、とりわけ私的団体が公共的な事象にどこまで関与するのか、その目的によって営利企業であるスポーツクラブがどのような制約を受けるのかという問題に取り組む準備を始めた。
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