研究課題/領域番号 |
22530104
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井上 典之 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70203247)
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研究分担者 |
志谷 匡史 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60206092)
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キーワード | EU法 / 憲法 / 商法 / ヨーロッパ人権法 / スポーツ法 |
研究概要 |
プロ・スポーツの組織・ガバナンスに関する現状を法的事象として明らかにすると共に、そのあり方に関する法的規律について考察するという本研究の目的から、初年度の研究成果をうけて、本年度は、研究代表者・井上は、EUにおいてスポーツという文化事象の財政的援助の仕組みであるスポーツクジについての国家独占の問題を、特に欧州司法裁判所の判決に誘発された,ドイツ連邦憲法裁判所での違憲判決を中心に、競争制限的な国家による経済活動の規律のあり方に関して考察すると共に、その結果としてのプロ・スポーツクラブの運営のあり方についての研究を進めた。また、研究分担者・志谷は、EUにおいて株式会社形式で運営されているスポーツクラブの問題に関心を高め、商事法の観点からの会社およびデリバティブにかかわる犯罪についての研究を進めた。それらは、学界誌や他大学の機関誌において公表された。また、研究代表者・井上は、日本の女子サッカーの世界での活躍を契機に、特にヨーロッパの組織をモデルにしたプロ・サッカーの仕組みに関しての法的視点からのガバナンスについて講演を依頼され、欧州サッカー協会の仕組みの下で展開されているプロ・リーグの法的基盤についての報告を行った。 なお、研究代表者・井上と研究分担者・志谷は、これまでの研究成果の確認と、研究最終年度の課題としての私的団体による公共的活動のあり方に関するEUでの法的基盤とそこで発生する法的問題、営利企業としてのプロ・スポーツクラブやそれを統括する団体の法的性格を研究するための資料収集として、ドイツ・バイロイト大学ヨーロッパ法研究所、デュッセルドルフ大学法学部に赴き、同時に、ヨーロッパ憲法の権威であるペーター・ヘーベルレ教授、ドイツ憲法・ヨーロッパ人権法講座のロター・ミヒャエル教授と意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EU法の中に文化事象としてのスポーツに対するいかなる法的規律が存在するのか、EU法の規律の下で経済的な営利活動としてのプロ・スポーツがどのようにコントロールされるのか、という点について徐々にではあるが、その内容が明らかになってきている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、最終年度に向けて、EU法による統一的コントロールを必要とされながら、ヨーロッパ各国ではスポーツ団体やその構成員たるクラブをどのような法的基準でコントロールし、どのような法的根拠を提供しているのかを明らかにするために、国境を越えたEU法という国際的法秩序の中での法的規律のあり方を具体的に検討することを予定している。なお、スポーツという事象の持つ文化的・経済的・社会的なレベルでの多面性から、公法的側面と私法的側面の融合可能性という観点でのEU法の研究も進める。 また、今回の研究で得られた知見を、EUの主要国であるドイツにおいて、その成果として発表できるよう、最終的な研究成果のまとめに入ることを予定している。
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