文学・芸術を学ぶ大学生は、例えば、文学テキストの処理技法、最新のメディア技術を駆使したメディアアートを含む芸術作品の制作技法、二次創作、パロディやパスティーシュの技法、模写の実技と作品のインターネット上への公表など、を修得する過程で、法的権利義務関係の生成、保護、衝突、などに少なからず直面する。言い換えれば、所与の実践コミュニティとしての文学・芸術の教育ないし学習という状況は、法学習の契機をも同時に学生に提供しうる。そして、そのような学習の場には法教育の専門家でない者がかかわらざるを得ない。 本研究者は、こうした「隠された法教育hidden legal education」の現場のワークに照準して研究を行った。具体的には、1、文学・芸術分野における法と教育の理論研究、2、文学や藝術の学習現場という実践コミュニティの具体に立ち入った法教育契機の経験的なデータ収集と分析((1)~(3))、3、法学習契機を日常の様々な文学・芸術学習の実践に可視化させるような、教材制作にむけた協働作業、および、そうした営為についての教育効果を測定と分析(4)、を行った:(1)2012 INTERNATIONAL CONFERENCE on LAW and SOCIETY(米国)における論文発表(2)法と教育学会(日本)における学会発表(3)東アジア法と社会学会(中国)における論文発表(4)慶応義塾大学大学院システムデザインマネージメント研究科におけるワークショップ(招聘) 法学を専門としては学ばない文学・芸術系の学生も法の生成、維持、運用にかかわる市民感覚を高めるために、生ける法を学ぶための教材が必要であることを示唆したことに本研究の意義があり、教材制作という営為にかかわることによって彼らへの法教育がより効果的になされうることを、教育効果測定結果として平成25年にむけて発表予定である。
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