研究課題/領域番号 |
22530108
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小川 明子 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (90530593)
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キーワード | 知的財産権法 / 著作権法 |
研究概要 |
追及権は、ベルヌ条約にも記載される著作者の権利であるが、アメリカ、スイス、日本等の著作権法には存在していない。一方、欧州連合においては、2006年の1月に導入された。本研究の目的は、将来の我が国での導入を視野にいれた欧州各国の追及権制度の施行状況の検討を行うことである。平成23年度の研究実施計画は、昨年度までに調査を行ってきたフランス、英国での知見をもとに、その他英米法諸国への調査対象を拡大することを予定していた。一方で、本研究の研究対象である追及権の導入に関して言えば、2012年は欧州における一つの重要な契機となる年となった。欧州指令は、新たに追求権を導入した英国等の国々に対しては、二段階の導入を評しており、2006年までに生存中の著作者への保護が、第二段階として全著作者へと保護を拡大することが求められていた。本研究課題の申請時には、全著作者に保護対象を拡大期限は2010年とされており、加盟国の申請があれば2012年までの延長が認められる形を取っていたが、現実には2012年1月となったため、それに対応する形で、英国を中心とした調査研究を継続し、2012年3月に再度英国を訪問し、著作権管理団体からのヒヤリング及び追及権の専門家との意見交換を行った。アメリカにおいても、2011年には連邦議会に追及権法案が提出されており、オーストラリアと合わせて今後もその動向を調査研究していく予定である。研究発表については、2011年11月に、集英社新書より『文化のための追及権-日本人の知らない著作権』を刊行した。本書の発行によって、追及権がいかなる権利であり、この権利があることによってどのようなことが可能となるかを専門家のみならず広く一般に知らせることができた。本書の発行後、「文化のための追及権-その後」と題した口頭発表も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的の一つには、我が国で追及権を制定するか否かの検討に入る以前の段階で、追及権そのものがどのように制定され、施行されてきているかについて、海外の導入事例を学ぶことがある。本年度中に、集英社新書より『文化のための追求権-日本人の知らない著作権』を刊行したことで、この目的を充足する内容が専門家のみならず一般にもアクセス可能な情報となったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、追及権が導入されて3年が経過したオーストラリアの現状調査を行うと同時に、英国を含めたEU諸国の状況のついても引き続き研究することを予定している。
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