研究代表者は、公共利益の実現の様々なパターン、あるいはそれをめぐる因果関係の相違を、消費者利益の実現を事例として研究している。そこでこのプロジェクトの目的は、日本の消費者庁、およびアメリカの連邦消費者金融保護局(申請時は金融消費者保護庁という名称が予定されていた)の設立を事例として、日米において実現される消費者利益の内容の相違を、両国における公共利益についてのアイディアの相違を要因として検討することであった。 具体的には、このプロジェクトは、以下の3つの目的を持って開始された。第一は、日本の消費者庁とアメリカの連邦消費者金融保護局の政策や組織、および両機関の設立をめぐる政治過程を明らかにすることであった。第二は、両機関における消費者利益の範囲や種類、およびそこで想定される消費者の意味やイメージを明らかにすることであった。そして第三は、両機関における消費者利益の内容の相違を、両国における公共利益をめぐるアイディアの相違を要因として明らかにすることであった。 その成果としては、第一に関しては、連邦消費者金融保護局の政策、組織、および設立過程について検討した(その結果は2014年9月に論文として公刊予定)。第二に関しては、日本では「生活者」や「消費者市民社会」といった言葉が象徴するように消費者利益が環境など他の公共利益と連続して追求されているのに対し、アメリカでは消費者利益が他の公共利益と独立して追求されており、その相違が前記両機関の政策の内容にも表れれいることを検討した。第三に関しては、そのような相違の背景として、日本では"the public interest"が想定される公共利益の一元主義が見られるのに対して、アメリカでは"public interests"が想定される公共利益の多元主義が見られることを指摘した。
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