研究課題/領域番号 |
22530114
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
伊藤 修一郎 学習院大学, 法学部, 教授 (70323326)
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キーワード | 政策実施 / 権限移譲 / ガバナンス / 市民協働 / 屋外広告物 / 政策アウトカム |
研究概要 |
屋外広告物規制及び政策実施研究についての文献調査を継続し、研究枠組みの作成に努めた。研究補助者の協力も得ながら、10件の自治体に聞き取り調査を行い、事例収集を行い、屋外広告物規制や政策実施一般に関する実態把握に努めた。この結果を踏まえて、屋外広告規制の実施窓口機関に対する質問紙調査及び屋外広告事業者に対する質問紙調査(いずれも郵送法)を実施し、集計結果の分析を行った。 政策実施に関する研究において、規制機関に対して行われる調査は珍しくないが、事業者に対しても実施し、調査結果を規制者と被規制者の両面から確認したところに本研究の意義があると考える。これによって、両調査で得られたデータの信頼度も高まった。また、屋外広告物に関する研究については、建築・都市計画分野では、相当の蓄積があるが、もっぱら広告又は景観の中身をどうデザインするかに焦点が当てられる。本研究では政治学・行政学の枠組みを用いて規制者と被規制者の相互作用を記述・分析できたところに意義がある。特に、2011年度に行った分析では、権限移譲のあり方や市民の関わり方が、政策実施過程(組織のあり方、実施手段、職員意識など)に違いを生み、ひいては政策アウトカム(自治体のパフォーマンス)を変化させることが明らかになった。このことは、政策提言にも結び付く発見であると考える。 日本公共政策学会において、政策実施研究に取り組む研究者に呼びかけてパネルを組織し、ここまでの研究成果を報告することとした(発表は2012年6月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助金申請では食品や建築の偽装に対する行政の不作為を研究対象に含めていたが、東日本大震災及び原発事故への対応で、自治体の食品安全・建築確認部局から調査協力を得ることが困難になったため、震災復旧と比較的関連が薄い屋外広告物規制に絞ることとした。質問紙調査においても、被災3県及び被災市町村は対象から除外した。 また、2011年度補助金の一部は2012年度に繰り越したため、聞き取り調査の一部及び屋外広告事業者に対する質問紙調査は2012年中に実施した。 このため、当初の研究計画に比べると、研究対象の広がりが限定されたが、他方、絞り込んだ研究対象(屋外広告物規制)を深く掘り下げることができ、結果として研究目的は概ね達成できる目途がたった。
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今後の研究の推進方策 |
屋外広告物規制について、2011年度分として実施機関(自治体)、被規制者(屋外広告物事業者)に対する質問紙調査を実施したが、更にステイクホルダー(市民)の意識に関する調査を実施し、ガバナンスの観点から理解を深めることとした。 収集した質的・量的データの分析を進め、成果を論文等で発表する。
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