当研究は、欧州統合の進展とフランスの地方制度をめぐる諸問題の考察を通して、中央・地方の政府間関係の中に見られるフランス独特の政治文化の特色を明らかにし、それらを、現代先進諸国の市民参加型の民主主義体制の中に共通にみられる諸要素、さらには政治なるものの中に存在する恒常的諸矛盾の再確認に結びつけることを目的としていた。 当研究では、EUにおける政策決定に加盟国の中央政府ならびに地方政府が絡むガバナンスの様相をとらえることが重要なポイントであり、24年度の研究では、引き続き、欧州統合の進展に伴いその重要性を増してきた欧州地域政策の政策決定過程について資料収集を進めた。欧州地域政策は、域内地域間の経済的・社会的不均衡の是正・拡大予防をその目的とし、政策を具体化するための手段であるEUの構造基金を通して、域内地域における経済振興政策への助成を行う。その特徴は、富裕国から貧困国への所得移転のみならず、地域の課題を解決するためのプログラム支援を行うこと、また政策の執行・運用におけるEUの諸機関、加盟国政府、地域間のパートナーシップが重視されてきたことである。EUの他の政策分野とは異なる欧州地域政策の特徴が、当該政策の履行過程における分権や補完性の原則を強調することから、欧州地域政策は欧州における多層ガバナンスの発展を促進してきた。そのガバナンスの様相について、欧州債務危機による影響を中心に、さらなる資料収集に多くの時間を割いた。EUの政策分野の中でも予算配分を重点的に受けてきた欧州地域政策が、債務危機によっていかなる見直しを迫られたのか、さらには、それが一加盟国であるフランス国内の中央・地方政府間関係に及ぼした影響について分析・検討した。
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