研究課題/領域番号 |
22530121
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
布施 哲 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (60345840)
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キーワード | 資本主義 / 政治思想 / 哲学 / イデオロギー分析 / 政治理論 |
研究概要 |
前年度は、シュンペーターの"資本主義終末論"において提出された見取り図に即した場合、どのようなイデオロギー的、言説的効果が生じるものと仮定され得るかについて、一定の方向性を打ち出した。シュンペーターの見取り図によれば、資本主義過程(capitalist process)は、(1)商品の差異を飽和させ、(2)労働成果と実績を平板な数値に置き換える結果、労働者から労働意欲と倫理を奪い、(3)さらには資本主義過程そのものが内包する自己破壊的傾向(創造的破壊における"創造性"の消失)によって、システムそれ自体に対する批判的言説(種々のメディア産業)を台頭せしめる結果、「イノベーション」や「アントレプレナー」が生起する余地を自ら喰い潰してそれ自体を終焉させる、というものであった。2011年度はそれら3つに対する政治的・社会的反作用について明確化させた。すなわち、(1)商品差異の消失に関しては、それを代替する政治的現象として「無媒介/直截的なるもの」への希求が生じるのであり、それと並行して(2)資本主義社会における良き市民=労働者=消費者は、中間搾取、代議制を通過しない「無媒介な/直截的」指導者を熱望するようになると同時に、自らはマルクスのいうルンペンプロレタリアートに限りなく近接してゆく、ということである。同様に(3)資本主義システム内における批判的言説は、批判そのものの自己批判、思考することの否定と行動の直截性に、よりいっそう惹かれるようになる。これが帰結せしめる実際の形態は、ある種のポピュリズムであり、より極端にはボナパルティズムである、という仮説が立てられたが、11年度は特に、その仮説を「フェティシズム」という補助線を引くことで検証することに問題点を絞った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現実の政治・社会状況と仮説との親和性が、予想をはるかに上回るほどあったためだろう。(名古屋市長、大阪市長への支持の集中、ギリシャ危機をはじめとする世界経済の混乱等々)
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2012年度は、シュンペーター的資本主義末期状況がもたらす政治的効果について、「ポピュリズム」「ボナパルティズム」「社会変動」「社会変動の担い手/行為体」という観点から、より政治理論的な総括作業に入る予定でいる。その過程で、当初からの予定通り、西欧マルクス主義や非マルクス主義的なその他の政治思想・理論との比較検討を行ってゆく。
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