公共サービス供給の代表的な方式は、行政による直接供給以外には、事業委託契約とバウチャー制度(準市場)に大別される。 日本における現状に関しては、1980年代以降、民間委託など名称で事業委託契約が大幅に導入されてきたこと、2003年以降は自治体の「公の施設」の管理運営に関して事業委託契約に準ずる指定管理者制度が導入されていること、バウチャー制度は戦後直後からの医療に続いて、最近では高齢者介護、障害者福祉にも導入されているが、諸外国と比較すると、児童福祉、義務教育において依然として導入が遅れていること、などが確認された。 質的な面での問題点としては、日本における事業委託契約が主に経費削減に大きく傾斜していること、いわゆる随意契約が多く競争の導入や透明性、公平性において欠けることが指摘できる。 また、バウチャー制度に関しての問題点としては、医療における医療法人の独占、福祉における社会福祉法人の独占、教育における学校法人の独占に象徴されるように、非常に厳しい参入規制が続いており、「選択と競争」というバウチャー制度の本来のメリットが不十分にしか発揮されていないことが指摘できる。また、基本的にサービス価格が統制されており、この面でも競争と選択が制約されているだけでなく、これらの分野での人材確保、報酬改善にとっても大きな障害となっている。 最後に、全体に共通する課題として、当該公共サービスのフルコスト(総費用)が行政側においても把握されていないことにより、民間供給主体に対するフルコストの保障がきわめて不十分だという点が挙げられる。 以上のように、本研究を通じて、日本における公共サービス供給における事業委託契約とバウチャー制度の現状と課題を明らかにするとともに、いくつかの改革提案をも示すことができたと考える。
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