最終年度の本年度は、カモッラ(camorra)研究の第一人者であるGabrielle Gribaudiナポリ大学社会学部教授を中心にナポリ周辺地域に勢力を有するカモッラの起源、発達、現状について意見交換を行った。一連の意見交換を通じて、Robert D. Putnamが大著Bowling Alone(2000)の中で互酬性の規範、信頼のネットワークなどの社会的な関係性を帯びる架橋(bridging)型社会資本(social capital)と対比した、内集団に強い忠誠を求める擬似関係的家族・友人関係などを含む結束(bonding)型社会資本が、カモッラの再生産の重要な要因の一つであることを確認できた。 ところで、本研究のもう一つの研究対象であるアメリカの産業地域事業団(Industrial Areas Foundation)の主としてコミュニティー組織化活動の検討(参照、拙稿「産業地域事業団(IAF)のプログレッシブ・ポリティックス-アメリカにおける草の根民主主義の実践に向けて」『阪大法学』61巻3・4号、2011年)は、「エリートの利益に牛耳られない」異なった種類の官民連携、企業とNPOの新たな連合、分権的・参加的なデモクラシーの実験、多層的・社会横断的なガバナンスを生み出すベースを成す共同作業(synergy)型社会資本の重要性を示唆してくれた。 カモッラにまとわりつく内閉志向の強い結束型社会資本の克服の仕様は、架橋型と結束型資本の相見える接面での軋轢を含む関係的資本を国家と市民社会に媒介する制度的エコシステムの構築の仕方に大きく規定されるものと考える。13.研究発表[雑誌論文]に記載の論考は、ナポリ大震災の復興事業に寄生したカモッラの復権を念頭に置きつつ、共同作業型社会資本の視点から東日本大震災からの復興・再生の成功ための条件を政治社会学的に考察したものである。
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