戦間期における日本とドイツの「新自由主義」の政治経済的軌跡を国内政治史、政治思想史、国際関係の観点から調査し、比較することを研究目的とする本研究の平成24年度の研究計画は、第1に補完的な史料の調査・収集を行うこと、第2に個々の分析を進めた上で定例研究会による比較検討を行うこと、第3に研究成果を公表することであった。この計画に対応して次のような研究をおこなった。 1 補完的な史料調査・収集として、瀧口が英国ナショナルアーカイブなどに出張して日本と大英帝国との通商関係資料を、小野がアデナウナー文書館などにおいてドイツ新自由主義関係の資料調査を行った。 2 個別の検討として、日本の新自由主義に関して、瀧口が昭和初期における大阪財界と新自由主義及び政党内閣との関係、日英の通商問題などについて上記調査を含めて研究を進め、森川は第1次世界大戦期において、自由貿易を先導してきたイギリスが採った輸入禁止政策をめぐる外交交渉について研究した。他方ドイツの「オルド自由主義」については、小野がフライブルク学派のランペ、ベームなどの諸文書の整理・解読を行うと同時に、オルド自由主義を代表するオイケンやレプケのエコロジーへの問題関心を明らかにした上で、アウトバーン建設と自然景観保護との関係についての著作をまとめた。 さらに「戦間期研究会」などの研究会を年4回開催して、戦間期新自由主義の比較検討を進めると同時に、同時期の政治経済に関する諸問題を検討した。 3 これらの成果は、分担者による論文、著書、学会発表によって公表された。 以上の研究活動によって、戦間期「新自由主義」に関する原史料の発掘、日独それぞれの分析を行った上で、国際的な比較検討を進めた。これらにより国家主義化が進んだと思われる戦間期において「新自由主義」的潮流が日独で存在したことの意義をあきらかにし、さらなる研究の展望を開くことが出来た。
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