9月の一週間にわたり、中国大連と瀋陽の図書館及び資料館での資料調査にあたった。特に瀋陽の〓案館及び北京の中国国立国会図書館などでの資料調査は今後において本格的な調査を進めていくうえで、極めて有益であった。但し、中国側の閲覧提供に関する厳しい制限のため複写作業は事実上断念せざるを得ず、筆記による写し作業を強いられたため収集資料には限りがあったことは残念であった。今後、繰り返しアプローチし、可能な限り有力な資料入手に尽力したい。また、3月上旬には韓国・釜山の国立資料館や釜山市立図書館、東亜大学校図書館などの資料検索に当たった。韓国の場合は複写などの便宜が与えられ、ある程度の成果を得ることができた。また、本研究の関わりのなかで、大連市の遼寧師範大学及び釜山市の東亜大学校の植民地研究者との研究交流を重ねることが出来、今後本研究を進めるに当たり、重要な知見を得ることができたのも大きな成果であった。そこでは交付申請者に記した台湾と朝鮮の植民地統治に活動した日本の官僚たち(=植民地官僚)の思想や行動を探るうえで、二つの植民地統治技術の相違性や共通性について、如何なる基準や視点から分析することが望ましいかについて思考する機会を与えられた。これら資料調査に加えて、中国だけでなく3月下旬には台湾の台中市を訪問し、同市内に残存する植民地統治時代の建造物群を調査することができた。これら残存建造物群に絡む資料なども今後はより具体的な方向性を持って取り組みたいと考えている。最終的には後二年間の研究予定期間のなかで、特に中国東北地域に存在する資料群の入手に尽力し、日本国内の図書館などに所蔵されている資料・文献とも照合しながら、従来必ずしも植民地統治技術の観点からの研究がなされてこなかった空白の部分を、新たな視点を盛り込みながら分析を進めたいと考えている。そのことによって台湾植民地統治と朝鮮値民地統治の共通性と相違性とを踏まえて、「満州国」統治の異質性、ある意味では"先進性"について強調していきたいと考えている。
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