研究概要 |
サルコジ政権の主要な目的は、戦後のフランスで形成され、これまで支配してきたフランス社会モデルを転換することであった。昨年度は、そのような意図に沿ったサルコジの改革について、Gibert Boutte, Nicola Sarkozy facealacrise, L'Harmattan, 2010, P.Cahuc et A.Zylberg, Les reformes ratees du President Sarkozy, Flammarion, 2009.を中心に分析を行った。その結果、新自由主義の考え方に沿って、フランス社会モデルを経済競争力があり柔軟な方向に導く改革を推進しようとするサルコジの政治的方向性が明らかになった。ただ、そのような改革姿勢は、痛みを伴うだけに、そして、民衆層への再配分を犠牲にした改革であり、なおかつ、エリート主導のスタイルだけに、国民の中に大きな不満と批判を呼び起こした。2012年大統領選挙を意識して、昨年度の研究では、そのようなサルコジへの批判をポピュリズムの観点から補強する作業も行った。すなわち、J.Hayward (ed.), Elitism, populisme and European politics, Ciarendon PressOxford, 1996, P.-A.Taguieff, Lenouveau national-popyulisme, CNRS Editions, 2012.を中心として現代のポピュリズムについて理論面からアプローチしつつ、ネオ・ポピュリズムの観点からマリーヌ・ルペンによって率いられ支持を伸ばしている「国民戦線(FN)」について、サルコジ政権と大統領選挙との関係も含めて研究した。その結果、マリーヌのFNが保守有権者も魅了していることが明らかになり、2012年の大統領選挙にとっても、これからの保守の政権戦略にとってもポピュリズムへの対応が重要であることが確認できた。
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