本研究は、およそ1990年代に相当する、江沢民時代の中国の中央地方関係を再検討することを目的とする。最終年度に当たる本24年度においては、引き続き02年改革の政治過程の分析を進め、一連の財政制度改革の過程の検証から得られた江沢民時代の中央・地方関係についての知見を総括する作業に取り組んだ。 上半期は引き続き、02年改革の政治過程の分析を進めることができた。ただ、夏季以降、10年に一度の世代交代で政治的に敏感な時期に重なっただけでなく、日中関係の極度の悪化から、中国国内での現地調査は断念せざるを得なかった。次善策として、香港、シンガポール、台湾などの研究所を訪問し、研究者と学術交流を行うとともに文献調査を行った。 下半期から人事データベースの作成をスピードアップするため、研究補助者1名と作業を進め、1999年から2003年にかけての省レベルの指導部(中国共産党常務委員会)のデータベースを作成することができた。 並行して、総括作業に着手した。「中央が人事を絡めて地方指導部を牽制したため財政制度改革に成功した」という仮説、いわば「人事・財政リンケージ説」に立って分析を進めたが、予想と異なり、人事と財政のリンケージがうまく析出されなかった。分析に問題があった可能性もあるため、人事は無関係であったとの結論を直ちに導くことは差し控え、今後も検討を重ねていくこととしたい。 総じて、制度改革の政治過程の解明と人事データについて現時点でのもっとも詳細な水準に到達することで成果を上げることができた。
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