本年度は、ジョン・アダムズ本人の知的背景を考察し、研究計画を遂行するための基盤作りに努めた。具体的には、アメリカの法制史学者であるデイヴッド・J・ベダーマンの著作を精読し、植民地時代から革命までのアメリカ知識人たちの教育環境を検討し、それを「アメリカ合衆国憲法の古典的基礎」(『アメリカ法』、2011年)としてまとめた。また、この時代の知識階層におけるピューリタニズム理解を明らかにするために『キリスト教のアメリカ的展開-継承と変容』(上智大学出版会、2011年)に論考を執筆し、ジョン・アダムズにとっての「ピューリタニズム」とはどのようなものであったかを考察した。以上をまとめると、建国期アメリカの世俗的教養世界と、宗教思想という二つの知的源泉をジョン・アダムズを通して理解し、明らかにしようと努めたのが今年度の研究実績の特徴である。 またこれと並行して、建国期アメリカにおける党派状況を検討した。これは、今年度の研究成果を翌年度以降の研究活動につなぐための準備作業である。具体的には、第二代大統領としてのジョン・アダムズ政権期における外交と内政を、植民地時代から続く党派抗争の中で整理し、その政策決定過程をスケッチした。この考察の過程は、『東京理科大学紀要(教養篇)』に、「アメリカ建国期における政党政治の契機(上)」という形にまとめた。このスケッチ作業は現在も進行中であり、本年度は同論文の下巻を執筆する予定である。
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