本研究は、連合国の外圧とドイツ側の内発的な制度構想がいかに交錯・融合して1949年にドイツ戦後連邦政治体制が形成されたかを解明するものである。 本年度は、第一に「占領統治構造と連邦制の原型創出」に関する作業を進めた。既存の関係研究文献を読み、アメリカおよびイギリス占領地区の統治機構の構造とドイツの関与を調べるとともに、アメリカ・イギリス経済統合地域の機構と意思決定システムに関する事実把握を行った。 第二に「州の境界設定と州政治体の形成」に関する作業を進めた。戦後連邦国家が形成される以前に、州領域がいかに画定されたのか、州はどのようにして政治体として確立したのかを検討した。 第三に、近年の連邦制論に関わる研究動向、政党制と連邦制の関連に関する研究、ドイツの2006年の連邦制改革研究との関わりで本研究を位置づける必要があるとの認識のもとに、近年のこうした研究動向を追跡した。 第四に、経路依存性の視点から19世紀中葉、第二帝制、ワイマール共和制、戦後の連邦制・連邦主義の連続性・断絶性について、連邦参議院、連邦・州権限関係、税財政制度、協調的連邦主義の四つのレベルで明らかにする作業を行い、2010年12月から「ドイツ連邦制史と経路依存」というテーマで論文を執筆し、これを『名古屋大学法政論集』第241号(2011年9月)に掲載した。 平成22年度繰り越し分を用いて、平成23年3月にドイツ連邦文書館、現代史研究所、連邦議会文書館で上記第一に関わる占領統治機関の未公刊文書を収集した。また第一の課題に関わる論文「ドイツ複合占領における国家化と原連邦制」を執筆した。これは平成24年6月に名古屋大学法政論集編集委員会に提出し、同年9月発行の『名古屋大学法政論集』に掲載される予定である。
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