研究課題/領域番号 |
22530140
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
北住 炯一 愛知学院大学, 総合政策学部, 教授 (20100901)
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キーワード | ドイツ / 基本法 / 連邦 / 州 / 占領 / 経路依存 / 執行連邦制 / 経路依存 |
研究概要 |
平成23年度は、(1)戦後ドイツ連邦制における経路依存、(2)占領体制と「原連邦制」の形成、(3)連邦・州権限関係の制度化という三つの研究課題を設定した。 (1)については、レームブルッフの研究から大きな示唆を得て、19世紀前半、ドイツ連邦、第二帝制、ワイマール共和制、1949年連邦制、1950年代の連邦制改革、1960年代後半の連邦制改革にいたる連邦制の歴史的展開を経路依存の視点に立って追究した。その成果を論文「ドイツ連邦制史と経路依存-1949年連邦制の歴史的位置-」(名古屋大学法政論集、241号、2011年9月)として発表した。これによって、連邦・州機能分割、立法への州の参画・協働、執行連邦主義、協調的連邦主義、政治結節型連邦主義、生活条件の統一性原理といったドイツ連邦制の特質の歴史的由来と系譜を明らかにすることができた。 (2)では、占領体制が1949年の西ドイツ国家と連邦制の形成にとっていかなる位置づけになるかを解明しようとした。その際、州の領域形成、州の行政体化と政治体化、アメリカ占領地区とイギリス占領地区の行政体化と政治体化、そしてアメリカ・イギリス統合占領地区の行政体化と政治体化、国家化と原連邦制といった概念を設けて考察した。平成24年2月にはこれに関する論文の第一草稿を書き終え、目下修正を施している。占領体制のもとで、1949年ドイツ連邦共和国成立の前提となる国家化が進行するとともに、戦後連邦制の原型がつくられたとの仮説が得られた。 (3)に関しては、社会民主党の連邦優位型連邦制、キリスト教社会同盟の州優位型連邦制、キリスト教民主同盟の連邦・州均衡型連邦制といった連邦制コンセプトと議会評議会における対立・調整過程の追究作業が残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記9.に記載した平成23年度の三つの研究課題のうち(1)と(2)は進展したが、ただ(2)についての実証作業が必ずしも十分ではない。また(3)に関しては関連資料をすでに検討したが、連邦と州の権限配分をめぐる争点、政党の考え方、占領軍政府の見解を把握しきれていない。その理由は、権限問題に関する歴史的継承性と戦後状況下で浮上した新たな連邦・州関係の掘り下げが不十分で、研究見通しが明確でないことにある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、(1)戦後連邦制の成立過程における権限配分問題と(2)占領統治機構の究明が課題である。 (1)に関しては、戦後連邦制を制度化した1949年の基本法の制定過程において、いかなる考え方のもとに、連邦と州の間でどのように権限を配分するかが争われ条文化されたのかを明らかにする。資料としてヘーレンキムゼー憲法会議議事録、議会評議会議事録、占領軍政府文書を用いる。 (2)については、アメリカ占領地区の州評議会、イギリス占領地区の地区諮問会議、アメリカ・イギリス統合占領地区の経済評議会の成立過程と組織改革を検討する。資料として、これら三機関の議事録、ならびに2012年3月にミュンヘン現代史研究所、コブレンツ連邦文書館、ベルリン連邦議会文書館で収集した未公刊文書を利用する。
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