研究課題/領域番号 |
22530141
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研究機関 | 愛知学泉大学 |
研究代表者 |
三船 毅 愛知学泉大学, 現代マネジメント学部, 准教授 (00308800)
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キーワード | 政策過程 / 地方政治 / 地域政党 / 空間理論 |
研究概要 |
本研究の目的は、国の政権交代を受けて中央の政策過程の変容が地方の政策過程にいかに影響を及ぼしたのかを究明することである。民主党政権に代わったことにより、地方分権改革も大きく進展し、国と地方の政策過程が変化することが予想された。しかし、民主党政権は内部対立から政治主導の政策過程へと変化していない。さらに、平成23年3月11日の東日本大震災により、国の政策過程は混乱している。 このような状況の中で、平成23年度は以下の2点を主に研究した。第1点は、国レベルにおける政策と地方レベルにおける政策の相互関係のメカニズムの考察である。国レベルの政策は、平成23年3月11日の東日本大震災の影響をうけ、大きく混乱したために、国の政策が地方自治体の諸政策に与えた影響は、政策領域により大きく異なる。 ただし、原子力発電所を有する地方自治体は、その可動の是非を巡り、従来の原発推進から大きく異なる政策を選択し、国による原発再開政策と対立している。また、民主党政権の目玉であった子供手当は、縮小を余儀なくされ、実際の給付にあたる地方自治体を混乱させたままである。これらの原因は、政治手動を唱った民主党政権であったが、党内部の混乱と東日本大震災の影響により、基本的には大きな地方分権改革への推進が停滞したものといえる。地方レベルの政策は、名古屋市と豊山町における政策過程を分析した。名古屋市は、河村市長が主張する住民税10%減税を巡る議会との関係に焦点を当てて政策過程を分析した。豊山町は住民討議会による政策過程を分析した。 第2点は、名古屋市と豊山町の有権者を対象とした意識調査を行った。調査方法は郵送調査であり、回収率は約32%であった。現在のところデータの基礎統計量を計算しているが、有権者の多くは名古屋市の住民税減税にかかる政治手法に懐疑的な態度である。 これらの研究の意義は、強力なリーダーシップによる選挙や住民投票における争点の創出は、地域住民の本来的な政策空間を歪め、地域住民の政治意識や政策選好を誘導する可能性があることを究明したことにある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が名古屋から東京へ移動準備のために、資料収集や関係者へのインタビューなどが若干今年であった。また、名古屋市における最大の争点であった住民税の10%減税が平成24年1月に修正し可決されたことにより、地域住民に対する意識調査時期が遅くなってしまった。ただし、これらの遅れは平成24年度前半で回復可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方向は、まず、第1点として、国レベルの三段階ゲームから導出される均衡点を、既存の社会調査データによる検証を行う。データは、平成23年度の調査で収集したデータを使用する。これらのデータを用いて、空間理論の3段階ゲームの各均衡点を検証する。第2点として、国レベルと地方レベルの相互干渉の分析を行う。具体的には、公共事業、環境政策、福祉政策などを対象にして、国レベルと地方レベルでの政策に関する相互干渉を空間理論でモデル化し、その均衡点を導出。また、データからモデルの検証を行う。 研究のスケジュールは、以下に示す。4^-6月にかけては。地方レベル」社会調査データ整理、分析を行う。7^-8月にかけては。地方レベル」空間理論3段階ゲームの均衡点を調査データから検証、国レベルと地方レベルの相互干渉の分析を行う。11^-12月にかけては「国レベル」「地方レベル」にける三段階ゲームの実証分析結果から論文執筆を行う。1^-3月にかけては報告書を執筆する。
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