研究実施計画に基づき、H22年度は文献資料の読み込みを中心とした研究を行ってきた。 研究視角として挙げていた「フランスの移民社会統合政策の特徴と、同政策に対する政治文化」に関しては下記のように学会で報告を行っている。 「フランスの移民問題とアイデンティティ-サルコジはポピュリストか-」(日本比較政治学会2010年度研究大会報告論文2010年6月20日) また、同じく研究視角として挙げていた「ムスリムとしてのアイデンティティとヨーロッパ(フランス)の理性主義」についても、「フランスの共和主義と歴史認識:いくつかの簡単なスケッチ」(京都産業大学世界問題研究所例会報告2011年02月22日)なる研究会発表を行っている。 前者の学会報告論文はサルコジの移民政策を第五共和政の政治文化の文脈の中で論じたものである。ここでは第五共和政下の左右理念対立による移民政策の行き詰まりの中で、サルコジのとった手法はプラグマティズム的であったことを主張し、その政策を単純なポピュリスムと位置づける見方を退けている。後者の研究会発表は、アルジェリア戦争についての補償の歴史をたどり、フランス人とアルキ(フランス側について戦ったアルジェリア人兵士)についての扱いの違いからフランスの共和主義を論じたものである。この発表については、原稿とするにはまだ未整理の部分を多く残しているが、ライシテに代表される共和国原理がやはり援用される形で、補償関連法案に影響してきたことを指摘している。なお予定していた、日本におけるモスク等の調査は東北大震災の影響で実施がかなわなかった。
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