本研究は、これまでの13年にわたって蓄積された研究を踏まえたものであり、北アイルランドでの現地調査をもとに、武力行使をともなう紛争を予防、回避、そして平和的手段によって解決し、さらに長期的展望として、公正で共存可能な民族間関係を構築していくための原則と政策形成の方法を開発することを目的としている。今次研究の研究目標は、現地調査をもとに、(1)プロテスタント系政治団体、とくにUUPとDUPの和平合意反対派の政治姿勢とその支持母体の動向を明らかにし、(2)1998年和平合意以降のプロテスタント系住民とカトリック系住民との間に存在する地域的な分離傾向と職種上の種別化などの社会的諸問題への影響について解明することにある。 かかる成果として立命館大学国際関係学会編『立命館国際研究』において、「1998年『ベルファスト和平合意』の構造(1)」(24巻2号2011年)、「1998年『ベルファスト和平合意』の構造(2・完)」(24巻3号2012年)、「北アイルランド紛争"Troubles"の政治的起源-1920年代における選挙制度改革をめぐって」(25巻3号2013年)を発表した。 平成24年は、英国・ロンドン大学LSEのジョン・ハッチンソン博士と研究内容についての意見交換を断続的に行い、博士のアドバイスのもとで、これまでの現地調査から得られた研究成果をまとめ、公表に向けた作業に集中した。かかる研究成果は、平成25年度に、「北アイルランド紛争"Troubles"の政治的起源」においてまとまられている。この研究成果に基づき、北アイルランド紛争の対抗軸であるカトリックとプロテスタントとのコミュニティ間の対立構造の原因とその起源を解明し、1998年和平合意以降の社会的諸問題への影響についての論考を発表するものである。今次の研究内容をまとめてして出版し、社会的な評価を問う予定である。
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